中国商売雑感

中国との商売に関しての戯言。

上島として三井物産時代での約8年間、及び、タックトレーディングとしてやってきた8年間の、合計16年間の中国との関わりから、お客様である需要家の皆様へ、「中国」を考えるための一助になればと思い、下記する次第です。

非鉄金属原料輸入商売を出発として、現在では2つの投資事業、
アルミホイールなどの製品も手がけるようになり、
さまざまな局面を体験しておりますが、需要家の皆様は、急激な発展を遂げている中国に対し、まだ、ある種のとまどい、不安、疑いをお持ちかと思います。

古くは、金属シリコンなどでのクレーム、また相場高騰の際のnon-delivery、契約概念の薄さ、日本との品質管理のあまりの違い、介在する公司の未熟さ無責任さ、などなど、枚挙にいとまがないくらいです。

しかしながら、2003年の現在、巨大なマーケットに育ち、豊富な鉱物資源に恵まれ、信じられない価格競争力を、目のあたりにしている日本人の一人として、
今後の日本経済は、中国なしでは語れないのも、私が言うまでもなく事実であります。

タックトレーディングは、中国の未熟さをいかに克服し、需要家の皆様に、
中国の「よい点」のみを、スムースに伝えるため、日夜努力していますが、
これからますます中国原料、製品を、当社需要家の皆様にご使用いただくため、
中国との商売でのエッセンスを、16年の経験で述べてみたいと思います。

(1)会社を信用してはならない、むしろ個人を信用すること。
日本でも、商売では、人と人の結びつきが重要ですが、中国では、想像以上に人次第で、商売が左右されます。
例えば、マグネシウムを20mt契約し、契約先が五金公司北京であったとします。
例えですが、五金は一流の輸出商社ですが、その場合でも、「どこのマグネシウム工場であるか」「工場長はだれか」「工場と五金の関係はどうか」「五金の担当は工場のだれと話したか」「契約の存在は口頭か文書か」「その工場から定期的に買っているか」などが、実は、その輸入商社自身が、把握している必要があります。

もし、そのどれも、関係が希薄であれば、実は、それは契約として本当に存在しているか、疑わしいのが実際です。
もし、相場が高騰した場合、実際に商品を出荷する工場が、突然、non-deliveryを表明することは、たびたびあります。
実際問題、日本の商社が、non-deliveryを理由として訴訟することは、
時間とコストが膨大にかかりますので、多くの例では、
「泣く泣く上昇した相場で穴埋め」するのが、一般的に残念ながらなっております。
しかし、それは、中国にとっては、「やっぱり所詮中国は品位なき国家である」
との悪い評判につながりますし、日本にとっても、「やっぱり中国は怖い」との印象をもつのみで、なにも生産的結果は生まれてきません。

また、首尾よく出荷されても、品質クレームが起きたときには、
問題の解決にも、多大な費用と労力がかかります。

現在、マグネシウム、希土類など、合計8~9品種の商品を取り扱わさせて頂いておりますが、結局は、「人間と人間の個性のぶつかり合い」であり、中国人を認め、日本人を認めてもらうこと、人間としての交流があれば、問題解決ができると信じております。

中国人は決して「会社」では動きません。「人間」で動きます。
日本人も人間関係を大事にしますが、「会社」を非常に重んじますので、
「会社」の面子めんつがしばしば優先しますが、中国では、会社は2の次です。

極端な話、例えば、金属シリコンの担当が、A社からB社へ移動したら、その商売自体が突然、B社との取引に簡単に変更します。 
(もちろんB社の信用力をまた調査しなければなりませんが)

結論、会社ではなく個人と商売する。

従い、今度は、(2)個人の人間性の見極め、となります。
これは、非常に難しい問題ですが、中国と日本というよりも、
商売での根幹にもいえること、とは思います。

人間、誰しも「儲けたい」「金持ちになりたい」との「物質的動機」がありますが、最近の中国では、特に、「飛躍的高度成長」の中で、「拝金主義」が横行し、とにかく自分のことしか考えない輩も、確かに存在しますが、
このような人物は、できるだけ早期に見極め、はやめに「さよなら」しなければなりません。

経済活動はある種、人間性をゆがめることとなっておりますが(残念ですが)、
現在まで、長く商売をつづけている中国の輸出業者、工場は、彼らの「儲けたい」心とともに、日本に「いいものを届けたい」(つまり日本にもなにか尽くしたい)、との心が感じられます。
慈善事業ではないのですから、当然そこには利潤追求が見えますが、
それがあまりにも、「日本はどうでもよい」「中国さえ儲かればよい」との姿勢では、結局、その人物は、その業界から消えていってしまっております。

当社では、お客様のニーズを最優先するので、中国に対しては、「ここまでやるのか」との、ある種、「驚き」を与えながら商売しておりますが、出張にて上島が説明するときも、また当社の北京事務所を通じて、強行に説得するときも、
「つねに、自分を、客先の立場において考えなさい」と言っております。
「もし、自分が客であれば、自分の商品を、心底買いたいと思いますか」
「自分の商品は、価格以外に、自慢できる点はありますか」との問いかけを行ってみます。
そうすれば、大抵理解し、改善に向け、前進することとなります。
結論、個人との深い交流を目指す。   

そして、商売の完成とはなにかといえば、(3)商売の喜びを共有する。
貿易に限らず、皆様のような生産者、いや、ありとあらゆる社会人は、
仕事に人生の大半を費やしておりますが、(私もそうです)
人生の大半を費やすその時間を、誰も無味乾燥なものにしたいと、願っている者はいないはずです。

ラーメン屋の主人が、一番幸せを感ずるのは、「儲けた」ことではなく、
客から、「おいしかった。又来るよ」の一言を聞いたときであるように、
私も皆様から、「いいものを常に供給してくれてありがとう。今後も宜しく」と言われたときが、一番仕事の充実感を感じます。(もちろん利潤追求を忘れることはありませんが)
中国の工場もまさにそうです。皆様の厳しい要求(納期、品質、価格その他)を守らせ、厳しく指導し、それを長年遵守してきた工場には、
「あなたの工場の製品は、このように評価され、このように感謝されています」とFEED BACKし、
「あなたの製品は、これからも必要とされています」と伝えます。
それが、工場長には強く強く印象として残り、
当社の、日本のお客様の、本当の意図がここでようやく伝わることとなります。この段階までいけば、もはやnon-delivery、品質クレーム、納期遅れなどは、
ほとんど起こらないこととなります。

なにか、商売論ではなく、人生論となりましたが、
当社の商売事情を、すこしでも理解いただけたら幸甚こうじんです。

2003年2月

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