小室哲哉と中国マグネ工場
最近の出来事として、小室哲哉の逮捕という事件がありました。
1990年代の絶頂期、日本の高額納税者番付で全国4位を続け、
銀行預金は100億円を超えるといわれた「神様」が、100億円を使い果たし、
10数億円の負債を抱え、5億円の詐欺容疑で逮捕されたのです。
私は、人間の果てしない欲、あるいは虚無感、目的の喪失への恐怖を感じました。
このような例は、枚挙に暇がないですが、古くは千昌夫、尾崎将司、村上ファンド、ライブドア堀江貴文など、頂点を極めた、あるいは極めようとした人物ほど、記憶に残ります。
同時に、昨今のマグネシウム工場、アルミニウム工場への中国での過剰投資も、犯罪性はないが、人間の欲望の限りなさ、達成感の喪失への恐怖という意味では共通のものを感じました。
世界需要が、せいぜい60万~70万トンなのに、気づいてみたら、計画を含め400万トン以上の、設備投資がなされるという、驚愕の事態も、無限の欲、達成感への、渇望がなせる業です。
中国のマグネシウム工場も、ここ1年は、特に莫大な利益を得ました。
絶頂期の小室哲哉と同じです。
1995年の小室哲哉のインタビューでは、「得たいものはもうない」とか、
「今幸せですか?」との問いに、「このままの状態が続けば・・」と回答していました。
でも、「このままの状態」は続きませんでした。
音楽の才能の枯渇も、あったかも知れませんが、香港への投資で70億損失したのは、音楽の才能の枯渇が原因でなく、「達成感の喪失への恐怖」から、
無限の成長への夢に走ったとみます。
人間は、「そこそこで満足」が、なかなかできない動物です。
従い、資本主義においては、大成功まで突っ走って死ぬか(これはごく一部)、
達成感の喪失の恐怖のため、無限の拡大主義に走って、
最終的には転落してしまうか(これが大多数)、のどちらかでしょう。
小室哲哉は、後者であったのですし、これからのマグネシウム中国工場も、
大多数が後者となるわけです。
人間は、成功体験を忘れられず、永遠の成功を求めて、ひたすら突っ走るサガにあるとも言えます。
当社としては、今後、どの中国工場が生き残るか、
5年程度、慎重に観察していかなければならないと思っています。
2008年11月5日