中国の無計画経済

最近のマグネシウム事情を通じて、中国政府の意図、中国経済の行方、を少々論じてみます。

現在の生産能力は180万トン/年。それに対し、世界需要は40万トン/年程度に減少。

当然、相場は大暴落でコスト割れ、にもかかわらず、新規投資案件は10万トン規模での案件が進行中。
これは、GMの倒産、トヨタの過剰生産設備が250万台とも言われ、
自由主義経済体制では、「いかに過剰設備を作らないか」が、
最も、生産会社の経営としては重要であるにも拘わらず、
中国マグネシウム(アルミニウムでもそうであるが)産業は、まるで、
180万トンの生産能力は無視しているかのようである。

日本人としては理解を超えているが、中国計画経済としては、下記の理由が挙げられるようである。

(1)「投資」そのものに価値がある。資金がそこに投じられることにより、
中国の資産国力が上がるわけであり、それを拒む理由ない。

(2)とにかく経済成長、8%は国家の至上命題である。そのためには無謀とも言える政策でもOK。
60兆円の経済支援は、中国の内在する貧困、格差の解決には不可避である。
経済成長には、投資、消費、公共投資、ありとあらゆる行為が必要で、
たとえ、無駄と分かっている「穴を掘って、また埋める」行為も、雇用創出という観点からは有用。

(3)地方政府は、相互間で権力闘争、共産党の出世階段を駆け上がるステップであるため、その地方省が潤えばよい、との官僚の論理もある。
世界経済には、明らかに不要な投資でも、その省の雇用、経済に、例え一時的でも、有効である投資は進める、「計画経済」が存在している。

(4)ゆえに、全体としては資本主義、市場論理を無視してでも、
巨大投資をする環境に、中国はあるといえる。
いわば、計画経済下での、「無計画経済」「非市場論理経済」が行われている。
存在しない需要に対しての、生産設備の正当性は、資本主義ではありえないが、
「需要の前に生産あり」のマルクス経済と考えれば、納得できる。

市場論理による資源の最適配分という論理は、中国の場合、当てはまらないと、
これからも考えるべきであろう。

しかしながら、日本でも国が介入した事業には、このような論理での無駄の例を、枚挙することは容易い。
予算を消化するために、毎年2月3月に無駄な道路工事を行ったり、
雇用保険予算が「余っている」との論理で、無駄な箱物をグリーンピアとして建設し、30億円の建物を結局、破棄、ないし民間に1千万程度で払い下げたり、
多くの、「一時的雇用創出」には貢献してきたのも、日本政府である。

結果、800兆円の借金が残っている。

中国は、「資源」という観点から、その潤沢な資金を、
市場論理を無視して投資(リオティント、ライナス等々)しており、
最後に勝つのは、(資源覇権として)中国であると思うと、資本主義の限界も露呈し、どちらが優秀な制度かと言えない、とも思っている。

2009年6月3日

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