グローバル化のジレンマ、流動性の進展と歪み
円は85円台に突入しました。14年ぶりの円高です。
通常は、貨幣の切り上げは、国力の評価が100%反映されるので、
円が切り上がったのは、「喜ぶべき」ことのはずですが、日本国民の大多数は、憂慮しております。
これは、なぜかいうと、「流動性」の進展と歪みで説明できます。
一国の中では、流動性が高まれば高まるほど、経済の需給のバランスも貨幣価値も、瞬時に調整されやすいので、流動性が高まることは歓迎されますが、国際社会では複雑です。
なぜなら、「国家・国益」という、永遠に流動性を阻害する存在があるからです。
資本主義経済は、流動性の高まりを目標としてきました。
貨幣の流動性、労働、資本、物流、全ての流動性が求められます。
もし、世界が、グローバル化の極致として、「完全流動性」が達せられたら、
全世界の人民が、同じ職種の賃金は同じ、物価も同じ、貧富の差も同じ、教育も同じとなり、
日本人だろうが、中国人、インド人、アメリカ人 だろうが、
例えば自動車産業の労働者は、同じ待遇を享受することとなります。
現実は・・・ 流動性100%ではありません。
貨幣価値の歪み、賃金の歪み、教育の差、政治体制の差、国益の差、等々で、
日本人の賃金と、インド人の賃金は、歴然とした差があります。
しかしながら、世界は、インターネットの普及、資本・労働の移動の自由の進捗で、流動性はかなり高まってきました。
これは、資本主義が常に資本の最大化、最適配分化、を追い求めていった結果の必然です。
資本主義は、資本・労働・貨幣価値・教育その他の歪みを利用した、「裁定行為」だからです。
つまり、全世界の人間が、「均一化」に向かおうとしているわけです。
これは、「富める国」は貧乏になり、貧乏な国は「富める国」、になることを意味します。
資本の流動性が高まれば、賃金の安い国で、安い製品を製造し、利益を得ようとします。
労働の流動性が高まれば、賃金の高い国で、高い労働性を提供しようとします。
教育の流動性が高まれば、頭のよい人材は、世界のいたるところで見つかるようになります。
つまり、日本からみれば、グローバル化は、「衰退」を意味するところになるわけです。
資本は発展途上国に流れ、労働は、外国人の安い給料に引っ張られ、賃金が低下し、教育レヴェルは、世界最先端から脱落することとなります。
では、どうすればよいか?
難問ですが、結論として言えるのは、自国にとって、
都合の悪い流動性向上を、阻害する方向性を採った国が、「勝つ」こととなります。
ドルに強制的リンクしている中国は、「繁栄しているにも拘わらず、人民元を安く維持して、繁栄を継続する」し、 資源を輸出制限することによって、流動性を下げて、国益を守ります。
自由貿易主義は、常に保護主義の脅威にさらされているのは、なぜかというと、「自分だけ保護主義を貫き、その他の国に、自由主義を強いること」に成功すれば、確実に、その国だけ繁栄することができるからです。
だから、保護主義の誘惑は、強大なわけです。保護主義とは、流動性の意図的な阻害です。
ただ、また他方確実なのは、「全員が保護主義に走れば」、
全員が破滅する、ということもまた事実です。
このジレンマの中で、日本という「富める国」が衰退を避けるのは、至難の業ということです。
2009年11月27日