彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず

言わずと知れた、有名な孫子の兵法の中の一節でありますが、
僕も含め、多くの日本の経営者が、座右の銘としてあげる言葉であります。

僕はこの言葉を、よく部下に「営業とは」を説明するときに用いますので、
ちょっとこの機会に、この示唆に富む言葉の意味を述べてみたいと思います。

日本では普通はこの言葉は、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」として知られています。

孫子は「彼を知り」としていますが、その意図するところは戦争という相対関係を語るより、むしろ経営・経済的環境で用いるのに適しているでしょう。

つまり、彼とは、不特定第三者も含む、

(直接の取引先)+(同業他社)+(一般経済状況)

の全てを含む、ということでしょう。

この言葉は『目的と手段の混同について=仕事をするということ』でも述べた、
「商売をすること」とも関連しています。

すなわち、(日頃部下に強調していることを以下引用します)

(1)商社営業の最大にして唯一の目的は、「商売をすること」です。
商売は上記で言う「百戦」です。
戦いに勝利すること=契約にこぎつけること、を意味します。それ以外の目的は存在しません。
それ以外の、営業活動・事務活動は、すべて「商売をすること」のための手段です。

(2)で、商売をするために、日々業務に邁進するわけですが、
そこには、戦略がなければ、その行為は無意味です。
相手国と戦争する場合、目的は「勝つこと」ですが、では勝つために、
何をどう、いつごろ、仕掛けるか、等々の戦略(兵法)が必要です。
竹やりで玉砕したって、誰も喜びませんし、日本国家にとって大いなるマイナスでした。
戦略がなかったわけです。

これ(兵法を考えること)は、構想力とか、政策立案力とか、と表現します。
それに、先見性・判断力が付加されます。

(3)戦略(兵法)を立てるためには、現状を把握しなければなりません。
業界全体の状況、特定顧客の使用数量、購買タイミング、購買方針、担当者の個性、部長の個性、担当者と部長の意思決定の関係、競争相手の癖・出方、すべてを知らなければ戦略を立てられません。

「彼を知り、己を知れば(自分の立ち位置を認識すれば)、百戦危うからず」です。
これは情報収集力、情報分析力、対応力とか表現します。

で、営業順序としてはまず、(3)をやって、次に(2)を実行して、(1)にたどり着く順序です。(以上にて引用終わり)

という風に、商売の目的と手段を、「孫子の兵法」を引用して例えることができましょう。

斯様(かよう)に、「彼を知り、己を知れば」は、
現状認識(周辺事情・己の内面・決意)の冷徹な実践をせよ!!との大いなる教えでしょう。

では、孫子はどのような「現状」を分析せよ、と言っているのでしょうか?

上記(3)は、僕が必要と思っている現状把握でありますが・・・
孫子は、「五事七計」と言っています。

五事(己の立場・能力の分析)とは、「道」(指導者と部下の志を同じくさせること)、「天」(タイミング)、「地」(地理的条件の分析)、「将」(指導者の器量)、「法」(組織の合理性)、七計(敵・・競争相手との比較、)

*主、いずれか有道なる―― 敵と自軍、どちらが一致団結しているか。
*将、いずれか有能なる―― 敵と自軍、どちらの指導者が有能か。

・・・・ 等々、地・法・兵の比較分析を、あらゆる観点からしなさいと言っています。
(言われてみれば、全部当たり前と言えば当たり前ですね。)

ということで、今回の結論、
「経済行為も戦争も、できるだけ多くの情報を収集すべきである。
業界も、商品知識も、商慣習も、取引相手の個性も、使用数量も何もわからないで、商売を仕掛けることは、竹やりで戦争を挑む日本兵のようで、愚の骨頂である」ということであろう。

2015年2月17日(弊社社員への訓示を一部引用)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です