欲と少欲、情と理

20世紀の産業の発達は、人間の欲と情(感情)の膨大なエネルギーを、
巧みに利用して成し遂げられた。

貧困からの脱出は、人間の基本的欲求なので、人類は経済発展には誰も躊躇せずに、その解決に向かって突進してきました。
その副産物として、環境破壊、温暖化が生まれましたが、この解決は非常にやっかいです。

なぜなら、この解決には「人間の欲を制限」して、
「感情を抑え、理性を働かせる」ことが必要だからです。

大変それは人間にとって難しいのです。

人間は、権力欲、金銭欲、物質的幸福欲、覇権欲、支配欲など膨大な欲の塊です。

たった一つ、欲を辛うじて制限できているのは(今のところ)、核兵器の使用だけです。
最後のわずかな理性が働いているため、人類の破滅が食い止められています。

言い換えれば、それも「生存欲」が「支配欲」「戦争に駆り立てる怒りの感情」を抑えているとも言えましょう。
斯様(かよう)に、現代社会は不安定な「人間の欲」と「人間の感情」の上に成り立っています。

感情は我々の人生を支配しています。
我々の行動原理も、実は、感情的に決断を下したあとで、衝動的な決断や行動をしばしば正当化するために、後から論理的理由を考えているに過ぎないのです。

最も理性的であるはずの裁判所の判決も、そのような思考過程でしょう。
感情とか欲そのものは「思考」されていません。自動反応です。感情は代替案などありません。
つねに結論はひとつです。

怒ったときは「怒った」だけで、同時に「笑った」り「安らいだり」できません。
感情は最悪の場合は、パニックと激怒を伴います。

最高の人格レヴェルであれば、崇高な落ち着きと自信、つまりは理想的な心理状態となります。
平均的な人間は、その両極端のどこかの中間で生きておりますので、その後の論理的意識は、前頭前野にて感情を決定している原始的な大脳脳幹に、方向付けの修正を求めなければなりません。

よく、カッとなってピストルを撃つ前に「10秒間」待ちなさいと言われます。
もし10秒間待てればどんなに殺人事件が減ることでしょう。

自動思考で、しかも莫大なエネルギーで人間を突き動かす感情は、一瞬のことです。
それを自覚し、コントロールできれば、その人間は成功します。
そして人類全てがそのような行動規範を実行すれば、平和が訪れますでしょう。

理性的で、少欲。それが唯一の21世紀の行動原理でしょう。

経済発展はもう止めましょう。
さもないと温暖化という緩慢な自然破壊が人類を戦争に駆り立てることとなるでしょう。
食料とエネルギーが不足する、すなわち「生存欲」が危機になったら、人間は何をするか分かりません。
生存欲は最低の人間の欲であり、だれも制限することはできないのですから。
水がない、食料がない状況に人間が置かれたら、何でもしますよ。たぶん・・・

2007年10月19日

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